
たくさんのふしぎ2018.9が発売されました。
一見僕とは関係なさそうですが、イメージカットの撮影などを担当させていただきました。
大事なのでもう一度。
たくさんのふしぎ すてきなタータンチェックの撮影を担当させていただきました
撮影したからというわけではありませんが、とても楽しい本でしたので、本の宣伝も兼ねてシェアしてみたいと思います。
仕事を受けた経緯
地方の時代といわれてもう何年経過しているでしょう・・・地方を見直すどころか、現実は、かなり厳しい部分も感じます。
僕は、あちこちの地域へ出かけ、自分の地域を愛する美しい姿、悲しみの涙をたくさんみてきました。
鉄道がなくなり、学校がなくなり、地域の活力はどんどん低下している昨今・・・
そんな中でも、自分たちが暮らす地域の良さを理解し大切にしているからこそ、周囲の環境にも優しさを持って接することができることも肌で感じてきました。
だから、なんでもかんでも東京がいいなどとは思っていません。
が、あえていわせていただくと、この仕事を名古屋にいながらできたことは僕にとって意味があることです。
地方にお邪魔して、素晴らしい、価値があると言っているだけでは説得力がありません。
地方でもできるのだ!と、いうことを示すいい機会に恵まれました。
今の時代、やり取りはネットも発達しているので問題にならないと感じます。
と、書いていますが、初めにこの話を聞いた時は、嬉しいお話ではあるけれど僕でよいのかなぁ?と感じました。
『何か役に立てることがあるかもしれない』そう感じたので、東京で直接打ち合わせをさせていただくことにしました。
『写真関連のことで相談していただいたのだから、最低でも編集者さんが抱えている問題解決の糸口ぐらいにはなるだろう』
個人の短期的な視点で見れば、僕が撮りたい!と思いますが、広い視点で長期的に見ると、誰が撮るかといったちっぽけなことよりも、本当に良いもの(最善を尽くしたもの)を残すことの方がもっと大事。
そんなつもりで打ち合わせに向かいました。
打ち合わせをしながら、役に立つにはどうしたらよいか。
何が一番良くて、何が一番必要なのかを考えることにしました。
見えてきたことは、
- 穂積和夫(ファッションの大巨匠)さんのイラストを補完する
- そのためには基本を突き詰めること
- 子ども達に大人の本気を示すこと
そしてさらに
- 子どもたちに対して可能な限りのことをする
- チェック柄に興味を持ってもらえるようにする
- 著者の奥田実紀さんの文章にインパクトを持たせる
- 作品を作ろうとしない(カメラマンとして良い写真を撮ろうとしない)
- なんで名古屋のカメラマンを使うの?と言われないようにすること(これ大事)
理由は様々ありますが、子ども達のために(それがたとえ見ず知らずの子どもだとしても)、休みが、残業が、などなどを言い訳にして、手抜きをする大人がどこにいるでしょう?
やるのかやらないのか、つまらない大人になるのか立派な大人になるのかのどちらかです。
チェック柄に興味を持ってもらうということは、言い換えれば、この本を手に取った子どもの中から一人でも、チェックや布の楽しさを感じ、それがたとえ趣味だとしても服飾の道へ進んでくれたらどれだけ嬉しいかということです。
たとえ一人でもそのような気持ちを持ってくれたら、大人にとってどれだけ夢や希望のある話になるでしょう。
『あぁ大人になったらこんな服を着てみたい』そんな楽しみでも持ってもらえたらいいのです。
打ち合わせをしていて、凄い写真はいらないと感じました。
あくまで普通に。内容に目がいくように。
変に手を入れて台無しになってはカッコ悪い、ダサくなるのです。
今回は、ガチなブツ撮り系の内容でした。
あえて名古屋にというのは、それだけで厳しい目で見られる気がしました。
せっかくお話をしてくれた方のために、少しでもケチがついたら良くないです。
名古屋のカメラマンなんか使うからといわれてもつまらないです。
だから、少しプレッシャーになりました。
嬉しくもあり、疲れました。
ラストカットが残った

撮影は順調に進み、全てのカットが終了しました。
ネットが発達しているので、カットの良し悪しもその場で判断していただくことができます。
なんら立会いの撮影と変わりません。
立会いだとずっとスタジオにいなければなりませんが、編集の方には自分の仕事を進めながら、必要な時だけ画面を確認することができるメリットもあったように感じます。
荷物さえ送っていただければ、撮影も数人で対応できますし、仮に立会いしたとしても大人の事情的な部分も、東京に比べていい感じなのではないでしょうか。
もちろん、東京での撮影にも対応できますので(ここ大事)。
全てのカットにOKもいただきました。
余力が残っていたら・・・そう予定していましたが、もう余力は残っていませんでした。
でも、全てのデータを確認しながらどうしてもモヤモヤしました。
気になったのは、ラストページのカットです。
話を聞いた時のことを全て思い出し何が必要か考えてみました。
やっぱり撮り直すことにしました。
もっと、子ども達に、ありありと、身近なものとしてチェック柄の存在を感じてもらう必要があるとわかったからです。
きっと編集者さんは、僕が別のカットを上げてくることを見越していたのだと思います。
スタジオも考えたけれど、臨場感をもたせたかったのでロケにしました。
チェックを際立たせるためにやんわり1灯とパキッとナマ光1灯の計二発でライティングしました。
ここからは、アシスタントを使えないので、僕が行ったりきたりマフラーを整えながら進めました。
ここに載せた写真は、使われなかったロケのカットです。
岐阜の知人を訪ね、1日使ってこのカットを撮りました。
最後に
写真を撮る究極の目標は、人のために役立つことのように感じます。誰か一人でも、思いもしない角度からでも、楽しんでもらえたり、喜んでもらえたり、助かったといわれたり、よく残してくれたといわれたりどんな些細なことでもいいのです。
改めてそう感じる機会になりました。
やりきってみて、久しぶりに清々しい気持ちになれました。
このような機会を与えてくれた編集者さん、今まで暖かく見守ってくださった皆さんに感謝します。
また、どこかの誰かのために役立つ機会が訪れますように。
ありがとうございました。